「廉くん。これあげる」

私は鞄の中から缶を取り出し、ガチャガチャと振って飴を取り出す。
振って出てきたのは白い飴。
私はそれを廉くんに渡した。

「な、にこれ?」
「飴。薄荷だと思うよ」
「ありがと」

廉くんはそれを口に放り込む。
ミントの苦さと冷たさにビックッと体を飛び上がらせるが、気に入ったのかふにゃりと顔を綻ばせた。

「うひっ」
「ど?」
「お、いしい。ありがと、ちゃん」

そうやって笑う、廉くんが大好きで私はいつも廉くんにお菓子を上げる。
私も廉くんも幸せになれて一石二鳥。

廉くんを見てたら私も食べたくなってきた。
私は缶を振って飴を取り出す。 また薄荷だった。
口に含めば、苦味が広がる。
でも、

「薄荷、実は苦手なんだよね」

そう独り言を空気に混ぜて、私は小さな声で呟いた。
にも関わらず、廉くんはそれをしっかり聞き取っていて、首を傾げた。

「なん、で?」
「苦いからかな。舌がヒリヒリするでしょ。あの感覚が嫌なんだ。それに苦いし…」
「そ、か」

廉くんは薄荷が平気らしい。
味が気に入っているらしく、また笑顔を浮かべた。

「苦い、けど、甘い」
「…そうだね」

そう、苦いけど甘い。

それはまるで人の一生を指しているような、または恋愛を指しているような。

それを見せ付けられていると言う意味でも嫌だった。

甘いままがいい。
今、幸せなのに、苦さなんて味わいたくない。
でもいつも奥に苦さを秘めているのはなんでだろう。

それはきっと私ばかりが彼に気持ちを注いでいて、彼からは思うほど返ってこないからだろう。
いつも私が廉くん廉くん言っているのに彼は私に笑顔を返すだけ。
これじゃあ友達と何も変わらないんじゃないかって時々思う。

「ど、ど、ど…」
「ん?」

いろいろ考えていたら、しかめっ面になっていたらしい。
廉くんはそれを気にして泣きそうだった。

「どうもしないよ、廉くん。考え事してただけだよ」

廉くんが安心するように言い聞かせるように言うとはぁと一息吐いた。
廉くんにそんなこと押し付けたって何も変わるはずないって、自分が一番知ってるはずなのにな。
気にするな、私。
気にしないのが一番さ。

「そ、良かった。、ちゃん、薄荷飴、もらって、いい?」
「あ、うん。新し…」

言いかけて、止まった。
いつの間にか廉くんの顔が目の前にあって、口と口が合わさっていた。
廉くんは私の口の中に舌を入れると、私の口の中にあった薄荷飴を奪っていった。

「…れ、れ、れ…んく…ん?」
ちゃん、嫌なら、オ、オレが、もらう、ね。ムリに食べても、ちゃん、辛そう、だから。それに」

…好き、だから、キスした。

小声で言うと、廉くんは頬を少し染めながら、笑顔を浮かべた。
きっと今の私の顔は真っ赤だ。
顔が急速に熱くなっていくのが分かる。
私は赤くなった顔を見られるのが恥ずかしくて、机に顔を伏せた。

「…卑怯よ、廉くん」
「ご、ごめん」
「…謝らなくていいよ…嫌なんじゃないから」

誰が廉くんにこんなこと教えたの…?

田島くん?
泉くん?
浜田さん?

この際誰でもいいや。
ここ教室だし、すごく恥ずかしいけど、すごく嬉しいから。

「嫌、じゃ、ない?」

伏せたのが彼をまた不安にさせたのか、弱々しく私に声を掛ける。
それに私も顔を上げて、答える。

「…むしろ嬉しいです」

私の言葉を聞けば、今までにないくらいの満面の笑みを浮かべて、どもりながらも嬉しさを表す。

「よか、た。オ、オレばっか、ちゃんが好きなのかと、思ってた」
「え」

廉くんの言葉に固まる。
『オレばっか』って…どうやら同じことを考えていたようだ。
私の心配は無用みたい。

ちゃんが、オレ、したことで嬉しいなら、良かった」
「…ありがと。廉くん、大好き」
「うひっ」

私以上に彼は私のことを好いてくれている。
不安がっていたのが馬鹿らしい。

もうやめよう。
私も悲しい顔なんて止めて、廉くんのように笑顔を浮かべた。




薄荷キャンディの魔法




甘い。
心の奥の苦味が消えていく。
魔法みたい。

嫌いだった薄荷は廉くんと一緒なら苦さの部分だって甘さに変わる。
廉くんが私にかけた薄荷キャンディの魔法で、苦しさだって楽しさに変わる。


End.


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後書き。
この度はDolceに参加させていただきありがとうございました。

甘いお菓子のお題に沿っておお振り夢、という素敵企画につい、飛び付いてしまった私ですが、夢どころかおお振りサイトすら持っておらず、他ジャンルのCPで活動していました。
それなのに参加を認めていただき、本当に雛形様には感謝しております。

さて、私は三橋夢で参加させていただきました。
三橋夢は少ないですが、彼はなくてはならない、とても素敵なキャラだと私は思っております。
今後、彼の夢小説が増えることを祈っています。

最後に、Dolceが成功しますよう心から願っております。

2008/1/15提出
夏海 南

[素敵小説提出ありがとうございました!! *Dolce/雛形]