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「山ちゃんさー、進路どうすんの?」 「え、秘密。は?」 午後5時くらいの屋上、もう昼みたいな照りつける太陽は元気をなくして涼しい風が吹いている。 グラウンドではまだまだ部活動に励む生徒の声が響いてるのに、 校舎内はちらほら電気の点いてる教室が見えるだけで静まり返ってた。 廊下の窓も閉められて、さっき玄関の戸締りをしてる先生もここから確認出来た。 そんな中、あたしは帰る気配の見えない山ちゃんの隣に座って暮れてく青空を黄昏ながら眺めてた。 今日は風が強い、雲がいつもより速く流れてる気がする。 「山ちゃんが秘密ならあたしも秘密」 「真似すんなよー」 「するよ、したい年頃だよ」 「は俺と結婚すれば良いのに」 そうやって笑顔でサラッと問題発言するから「何だよ、それ」ってあたしも適当に笑って流せば山ちゃんは「真剣だよ」って言って立ち上がって、 髪を靡かせながらグラウンド側のフェンスの方に歩み寄った。 山ちゃんがフェンスを握ればそれに答えるようにフェンスは軋むような音を立てて山ちゃんの指に絡る、 そんな些細なことが今の山ちゃんの一言の所為で美化されて映って、考えるよりも先にそんな山ちゃんの後姿から目を逸らしてしまってた。 「、俺がもうちょっと大人になったらさ」 「・・・うん?」 「そしたらまたちゃんとプロポーズするから、返事はそんときに頂戴ね」 「え、ちょっと待ってよ、山ちゃん」 今日1番の強さの風が吹いて、それに逆らうように振り返ってフェンスに体を預けて笑う山ちゃんが、微かに光る太陽を背負って格好良くて、 根本的な問題を忘れそうになったけど必死に正気を保って、1人言い終えて満足してる山ちゃんにそう言ったら、 山ちゃんはまた柔らかく笑ってあたしを手招きした。そんな一連の動作が眩しく見えるのはきっと全部太陽の所為。 「何、?」 「いや、その、そもそもあたしら付き合ってないじゃん」 「知ってる」 「え、じゃあ今の冗談?」 山ちゃんの前に立って苦笑を浮かべてそう言ったら、山ちゃんは「まさか」って言ってあたしの手首を掴んで引っ張った。 当然気を抜いてた所為で山ちゃんの胸の中に倒れこんで、優しい顔しつつすごい強い力で抱きしめてくる山ちゃんに突然胸が高鳴った気がした。 直に体温が伝わってきて、山ちゃんの心臓の音まで聞こえてきて、呼吸1つ1つが感じられて、このままこの腕の中で眠りについてしまいたいとさえ思った。 「でも、俺のこと好きでしょ」 「・・・え?」 「好きでしょ」 「・・・はい」 耳元で囁かれて負けたとばかりにそう口にすれば、今度は声を出して笑って撫でるようにしてあたしの髪を梳かす山ちゃん。 何かそれがちょっとムカついて恥ずかしくなって、あたしもヤケクソになって声を出して笑えば、何だかもう色んなことがどうでも良いような気がしてきた。 笑って伝わる振動が心地良すぎて意味もなく涙が零れてきたけれど、山ちゃんがしっかり抱きしめてくれてるからこれ以上なく嬉しくて仕方がなかった。 (Dolceさまに提出。)(2008,09,11)
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