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キィン、(・・・お)グラウンドに音が響いた。打ち上げられた球は センターのグラブに吸い取られていく。パン、と乾いた音が聞こえた。 あーくっそ、バッターの勇人は悔しそうに俯く。 「ドーンマイ」 部員のひとたちに声をかけられてすこし笑って答えてたけど、やっぱり 勇人は悔しそうだった。(・・・あ)それから何かを探すように 泳いでいた勇人の視線が、わたしで止まった。そしてわたしにむけてか 勇人は苦笑した。(・・・え、) 待ってて、口をぱくぱくさせて勇人は 言った。頷いてみせるとまた笑って、小さく手を振ってからベンチの ほうに戻っていった。(・・・・・・なに、) 「・・・あ、!」 「 ゆーと・・・」 勇人に言われたとおり、いつも帰る方向の校門で待っていると、 背中から勇人の声が聞こえた。振り向くとわたしのほうへ駆けてくる 勇人がいた。 「ごめん、待った?」 「待ってないよー」 「そっか、ていうかよくわかったね、俺が言ったこと」 勇人は笑いながら言った。少しだけ息が弾んでいる。(いそいで きたのかな、)そうだったら悪いなぁと思いつつ 勇人に答える。 「うん、だって勇人のことずっと見てたもん」 練習してる間、と言ってから気づいた。(・・・は、)慌てて勇人を 見ると、びっくりしたような顔をしていた。( や、やや)この 恥ずかしさを紛らわせようと言葉を考えるけれど何も思い浮かばない。 訂正するようなことじゃないけど考えもなしに口を開くと、文章とは 呼べない言葉たちがのどから溢れ出る。 「あああああああの、ち ちがくて、や ちがくないけどわたしええと」 「・・・・・・俺も」 「 ・・・へ」 わたしがわけのなからないこと言っていると、勇人の落ち着いた声が わたしの声を遮った。混乱してしまって何が何だかわからないわたしは 情けない呆けた声を出してしまった。そんなわたしに向けて勇人は 言葉を続ける。 「 俺も練習してる間ずっと、のこと考えてたよ」 ふわ、と微笑んだ勇人に、わたしは身動きが取れなくなる。(・・・っ) 勇人の声と言葉は、わたしの神経を乗っ取る力を持っている、とわたしは 思った。 「今日打てなかったけど、俺絶対のためにホームラン打つから」 だから待ってて、と微笑んだまま勇人は囁く。でもすぐその表情を 解いて、「うわなんか俺恥ずかしいこと言った!」とおどけたように 笑った。「・・・勇人」そんな勇人を見てわたしは、勇人みたいに 落ち着けないけど、でも ちゃんと勇人の瞳を見ていった。 「わたし、 待ってるね」 |