「なぁなぁバケツプリンって知ってる?」


何の前触れもなく、思い出したように悠一郎が言った。バケツプリン・・?ニカっとまるでいたずらっ子のように笑ってもう一度、なぁ知ってる?と問いかける。知らないこともないけど・・なんで、いま?



「・・うん、なんとなく分かるよ」
「それね、おれん家で昔作ったの」
「へぇ!すごい。お家のバケツ使って?」
「うーん。・・たぶん」
「悠一郎も食べたの?」
「それがさー兄貴たちが作ったの。で、食おーと思ったらないとか言われた」
「あー・・」
「ひでぇよなぁ。あれね、スゲーおれの夢なの!」
「そっかぁ」
「・・・でさ!作ろ、!」
「・・・・・(そういう展開だと、思ったよ)」




わたしはまだ答えてないのにテスト期間をいいことに、明日の昼におれん家きて!と勝手に日時を決められ(悠一郎、そのあと勉強する気とかないんだろうなぁ)おまけに、家族だれもいないから!なんてちょっと意味深な言葉も置いて、バケツプリン大作戦(と悠一郎が命名)が決定してしまった。


当日、ちょっぴりのお洒落をして、一応お菓子の本も持っていくことにした。田島家は、いつ見ても大きな家。ご飯をごちそうになったこともあるけれど、大家族の食事は圧巻だった。この大きな家に悠一郎と二人きり・・・て!とりあえず、そういうのは全部置いといて!



「母さんに話したらさ・・」
「(・・お、落ち込んでる)」



出迎えてくれた悠一郎はいつもの笑顔ではなく、しょんぼりとしていた。リビングへ案内されると、テーブルの上にふたつ並ぶ小ぶりのアルミバケツ。その中に、薄い黄色の物体。

昨日の放課後、悠一郎はわたしを呼んでプリンを作るんだけど、とお母さんに許可を取ろうと思ったらしい。けれどお母さんは、勘違いをしたのか、単純に作ってあげたかったのか、はたまた単純に邪魔したかったのか(そういうお母さんなのだ)わざわざバケツを用意して作ってくれてしまったそうなのだ。



「一緒に作りたかったのにさ」
「うん・・でも、お母さん折角作ってくれたから、ね。食べよう?」
「・・はそれでもいいの?」
「(う・・どの意味で取ればいいんだろう)・・・いいよ!一緒に食べられれば!」
「・・・・なら、いっか!食おうぜ!」
「(よかったー・・)」



とりあえず一安心。したのも束の間、悠一郎はバケツからお皿へとプリンを落とすことに失敗。逆にわたしは綺麗なプリンの形が作れてしまったので、更にへこんでしまった。さっき食べれればいいって言ったでしょうが!




「悠一郎?食べないの?」
「・・・・」
「美味しいよ。食べないなら、食べちゃうよ」
「・・太っても知らない」
「太らせるのはそっちでしょうよ」
「んあー・・もうおれかっこ悪くてやってらんねぇ」
「うん、かっこ悪い。うじうじしてないの」


そう言って、尖らせた悠一郎の唇にキスをする。わたしからするなんて初めて・・心臓ドクドクいいすぎて、いま食べたプリンと一緒に出てきてしまいそうだよ!



「夢、だったんでしょう・・?」
・・プリンの味した」
「た、食べたからね」
「おいしい。ね、もっかい」




にやりと笑って、拒否する間も与えられない。薄い黄色と濃い茶色が混ざるみたいに、わたしたちは深く甘く。





バケツプリンの陰謀
も、もう!自分で食べなさぁい!!

(080301)
「*Dolce」提出
参加させてくださり、ありがとうございました!

[素敵小説提出ありがとうございました!! *Dolce/雛形]