ぱくり。一口包み込むだけで、口内にあまいあまい生クリームがふわりと広がっては溶けた。
あまいもの好きならこんなに至福な瞬間はない。

「うおっ、!なに食べてんの!」
「ん?ショートケーキだよ」

生クリームがだいすきらしい水谷くんが、瞳をきらきらさせながらわたしのもとへやってきた。
今にも涎がたれそうなその表情はとてもではないけど高校生男児には見えない。

「いいなあ、いいなあ」

まるで子犬が食事を催促するような瞳で水谷くんはショートケーキから目を逸らさなかった。
言外に「オレも食べたい」と意味しているのは明らかで、わたしも例外なく気付く。

「食べる?」

そう訊くと、「いいの!?」とこれまた嬉しそうに水谷くんは顔を緩ませた。
くどいようだけどその姿は高校生男児とは思えない。(よくよく考えてみればまだ中学から上がってきたばかりなんだから別段おかしいことでもないかもしれない)

「いいよー、はい」

わたしは一口サイズ(水谷くんには少し小さかったかも…)のスポンジをフォークで突き刺し、水谷くんに差し出した。
「え?」と水谷くんは一瞬ためらったようだけど、そのまますんなりと水谷くんの口にスポンジが運ばれる。もちろん生クリームもたっぷりと。

高級なショートケーキではないけれど、生クリームはたっぷりだし普通においしいから、きっと水谷くんは喜んでくれるだろうと思っていたけれど、予想に反して彼は黙ったままだ。
おまけに顔を真っ赤にさせて硬直している。感激で声も出ないとか?
おいしいことはおいしいけどそれほどだっけ? わたしは不思議に思ってまた一口サイズにスポンジを切って、今度は自分の口に運ぶ。 うーん、確かにおいしいけど普通のケーキだ。

わたしが首を傾げていると、水谷くんがやっと口を開いた。

「………おちた…」

そう発せられた言葉があまりにも意味不明で、わたしは再度首を傾げた。

「何が?」












一口ショートケーキ
(恋に、なんて言えない)









For Dolceさま
素敵な企画に参加させていただきありがとうございました!